突然、出てくる人名的表現について

こんにちは。浅野 正憲です。
産業翻訳者として活動しながら、翻訳者を育成し、様々なテーマでブログを発信しています。

 

翻訳をすると、文書が書かれた国の歴史的な人物の名前が、
ぽっと慣用表現として現れることがあります。

 

我々には馴染みなくとも、
これは、その国の人々同士だと、
名前を聞いただけですぐに分かってしまうメッセージであります。

 

それは、そのメッセージそのものをただ言うよりも、
インパクトが強く、それほどまでに、
そんなメッセージを伝えたい時に現地の人々が使う言葉です。

 

だけど、そんな言葉を和訳しなければいけない時はどうすればいいのでしょう。

 

浅野
例えば、文の中にこんな一節があったとします。

“This is like Rosa Parks moment.”

 

単純にGoogle翻訳に入れてみると

 

「これはローザパークスの瞬間のようなものです」

 

となります。

 

ですが、これでは全く意味がわかりませんよね。

 

これは、翻訳をする前にRosa Parksを調べる必要があります。

 

調べてみるとこれは、
ローザ・パークスという女性の名前であることがわかります。

 

実は、この人は、よく革命を起こした、
または、正義のため反抗をした人々を称する時の
代名詞として使われます。

 

特に、大人物でもない一般の人が、
そのようなアクションを起こした時に用いる言葉です。

 

なぜかというと、まさにこのローザ・パークスという人が、
そのようなアクションを起こして、
アメリカにおける大いなる社会革命を為し得たからです。

 

この人が生きた時代とは、
アメリカで人種差別が公然と認められた時代でした。

 

特にアメリカの南部では、
黒人と白人がレストランで同じテーブルに座ることが許されず、
学校も別々で、公共交通機関のバスでは、
黒人は後ろの席、白人は運転席とドアに近い前の席に
座ることが義務付けられていました。

 

ローザ・パークス氏は、1955年のアラバマ州モンゴメリという町で、
仕事が終わった帰宅途中に、バス後部の黒人の2名席に座っていました。

 

彼女は、40代の黒人女性でした。
その時、前の白人の席は満席でした。

 

そして、当時は席が別々になっているだけでなく、
黒人の乗客は、白人席が満席になると、
新たな白人客のために席を譲らなければならないと法で定められていました。

 

白人がバスに1名乗った時、
彼女の横の黒人が席を譲りましたが、
白人客は彼女の横の席に座りませんでした。

 

法的には問題はなかったのですが、
2人席に黒人と白人が肩を並べて座ることが
習慣として許されてなかったのです。

 

そこで、運転手は彼女に、席を譲るように促しました。

 

しかし、彼女は拒否しました。

 

そこで、運転手がしたことは、
彼女の席を白人専用の席としたことです。

 

なぜなら、彼女の席の列は白人席の真後ろだったので、
白人専用の席の範囲を後ろに広げることで
彼女が席を法的に譲らなければいけないように仕向けたのです。

 

でも、パークス氏は席を譲りませんでした。

 

そのことで、彼女は逮捕され、罰金刑を受けました。

 

そのニュースが伝わり、公民権運動家だったキング牧師が、
そのバス会社に対してのボイコット運動をするよう
現地の黒人の人々に呼び掛けたのです。

 

当時、バス会社は売り上げの多くを
黒人の通勤客で賄っていたため、
それが1年以上も続き、
結果、バス会社は大損益を受けることとなりました。

 

また、裁判所が、人種分離は憲法違反であるとして、
バスの席の人種分離を禁ずる命令を出しました。

 

その後、このキング牧師率いる人種差別撤廃運動が全米に広がり、
1964年には、連邦法としてあらゆる人種差別的な処遇を禁じる
公民権法が成立したのです。

 

たった一人の市民が立ち上がったことが、
社会全体に大きなうねりを巻き起こし、
社会を大きく変革した見事な成果でした。

 

このことは、アメリカの小学校の教科書にも書かれており、
アメリカ人でローザ・パークス氏を知らない人はいません。

 

なので、革命者をローザ・パークスと表現することがあるのです。

 

さて、和訳するなら、どう書けばいいのかというと、
ちょっとしたセンスがあれば、こうです。

 

「これは、ローザ・パークスになったような革命的な瞬間だ。」

 

でしょう。

 

ローザ・パークスは消せないのですが、
だからといって、ローザ・パークスだけでは足りないので、
補足の説明として「革命的な」という言葉を入れてみましょう。

 

読者は、ローザ・パークスという人物について知らないとしても、
革命的という意味は理解します。

 

そして、この人物の名前が気になるなら、
自分でローザ・パークスについて調べるでしょう。

 

そして、より感慨深く、その言葉の意味を受け止めるのではないでしょうか。

 

このような翻訳をするのは、
マニュアル上ではそれほどないかもしれませんが、
HPの翻訳では、代表者挨拶などで、少し出てくることもあるかもしれませんね。

 

もし、そんな直訳してよくわからない文章に出会った時には、
しっかり調べてみてくださいね。

 
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